「覚悟の磨き方」
この著書を読んで
この著書を読んで、松陰先生は自分自身と常に向き合っていたのだと強く感じた。人生を歩む中で自分の生き方はこれでよいのか、正しい判断であったか、欲にかられた行動でなく、自分の美学に沿ったものであったか自問自答を繰り返し、自己を形成していったのではないかと思う。志や自分の哲学を強く持っていたからこそ、こうした現世でも語り継がれる人物になられたのだと思う。
同時に、比較するのもおかしな話だが、20代後半今の自分を顧みると恥ずかしい思いで一杯である。自分に哲学がない、つまり自己がなく、物事の判断基準が定まっていない。判断や決心を迫られた際に、常に暗中模索している状況である。それに対する危機感もなく、安定や名声を得るために、目の前にある「“なんとなく”自分がすべきこと」に一生懸命になっていた。そんな自分を強く見直せる良い機会となった。
この本の中には、物事の道理や人間として生きる意義、自己哲学など抽象的で普遍的な表現が随所でみられ、間違いなく、読者が自己形成する際の手助けになる本だと思う。また松陰先生の哲学に沿った具体的な行動及び考え方についても多数記載されている。それゆえ、歴史的偉人の考え方や生き方を真似て「まず実践してみる」ことが可能であり、実体験的に学びを得ることができる。ちなみに松陰先生も本書の中で、本を読むだけではなく、著者を真似て行動してみることを勧めている。
本書を読み、自分が重要であると感じた点を以下にまとめる。
・自分美学と志を持つこと。
・客観的に振り返り時点修正する勇気を持つ。
・清廉であれ。
・決心し行動する、そして継続する。
・自分の内側に焦点を置く
<自分美学と志を持つ>
自分の美学とは、自身が携える哲学のことであり、哲学は生きる指針となる。志は哲学により形成される自己研鑽のゴール、この世に対して成し遂げたいことである。
本書の中で、目標のないヒトは人間であるべきでないとの記載がある。つまり自分が生かされている意義を考え、この世に対して自分は何ができるのか、自分の魂をどう昇華させようか、明確な志を持ち精進する姿勢こそが人間たる所以である。また志の実現に向けて邁進するときに確立された哲学がなければ、道に迷ってしまう。そうならぬ様に、自分の生き方を定め、欲望を自戒し自分美学に沿った人生を歩むことが重要であるのだと感じた。
<客観的に振り返り時点修正する勇気を持つ。>
井の中の蛙という言葉があるが、とある環境に身を置き一定期間が経過すると、日々が慣例化され周りが見えなくなる。そして物事の判断が鈍ってしまう。そうならぬ様に、時折自分の判断と行動を客観的に振り返り、自問自答を繰り返す。そうすることで環境に依らない“自己”を確立していけるのではないかと思う。
<清廉であれ>
「清廉」とは、「どんな人といても、自分を見失わない。」
「協調」とは、「どんな人といても、その人の調子に合わせて楽しめる」
相反する両者において、重要なのはそのバランス。他人の考え方を尊重し認めながらも、自分の考えを述べることができる人であれと本書の中で綴っている。しかし「自己の確立」に着目すると清廉であることは最重要項目だと思う。さらには逆境に立たされた時こそ、「清廉」であることで、逆境をもゴールを示す道標に変えて直向きに歩むことができると思う。
清廉でいることは同時に自分に覚悟を決め、自分を磨き上げることに繋がる。
<決心し行動する、そして何が何でも継続する>
「人はいつでも、いまこの瞬間から変われるのですから。」
本書にて松陰先生が綴った一言であるが、この言葉はとあることから感銘を受け、“自分を変えるために行動したい”という思いに留まる人間を後押しする言葉である。本書の中において、松陰先生は随所で行動することの重要性を述べている。例えば、偉人の本を読み知識を肥やす人はいたとしても、真似て行動する人はなかなかいない。知識は持っているだけでは何の意味も持たない、エゴである。その知識をどう活かすか、世の中にどう役立てるか考え、行動したときに知識を自分の能力として血肉化することができる。また行動を起こすスピードも重要であり、「感動は逃げやすい」と綴っている。“自分も頑張ろう”と意気込んでも、素早く行動しなければ感動は心からすぐに逃げてしまう。また瞬発的に行動を取ることも重要だが、行動が習慣化するまで気を抜けば開けた道は一瞬で塞がってしまう。まるで人が通らなくなった獣道のように。つまり、ある事柄に感銘を受けて自分にも取り入れたいと思った事があれば、自分の美学に沿った行動をすぐさま起こす。そしてそれを継続し、血肉化する。特に頭ばかり肥大化し、中身が伴わない現代人の我々には、ぶれない行動力が必要であると思う。
<自分の内側に焦点を置く>
「自分の内側にあるものは、求めればいくらでも得ることができる。」
自分の内側にあるもの、すなわち「人を思いやる気持ち、志・哲学を清廉に貫く気持ち、仲間との約束を守る気持ち」等の自分の中にある気持ちは、自分から求めればいくらで手に入るものである。しかし、自分の外側にあるもの、すなわち「お金持ちになる、有名になる、人脈をつくる」等の対外的な評価が関係するものは得ようとして得られるものではない。自分の外側のものに目を向け、雲のような存在を手繰り寄せるために、心を尽くすことは馬鹿げている。その様に自分の外側にあるものは、明日にでも全てを失うかもしれない。だからこそ、他者からの評価に気を取られることなく、「自分はどう生きたいのか」について考えを巡らせ、自己の哲学・美学に対して忠実に生きていくことが最も大切なことである。
最後に
本書を読み終えて、今後自分が目標とする事を以下に示す。
・まず自己哲学・美学を確立し、確固たるものにする。
・大きな夢・志を心に決めて、自己哲学に沿って日々研鑽に励む。
・自分の内側に焦点を置く。他者からの評価に振り回されず、常に自分の心と向き合う。
まずは、この3つの事を実践したい。たかが3つであるが、人生の帆を大きく変える取組みになると思う。だからこそ、しっかりと時間を取り、己について考えを巡らせたい。
併せて、自己の哲学を確立するにあたり、以下の図書を読みたいと思う。そして次回はこれらの図書について、記事を書きたいと思う。
・「生き方 人間として一番大切なこと」 稲盛和夫著
・「武士道」 新渡戸稲造著